EMPROOFって何?

EMPROOF®(エンプルーフ)とは、電磁波をシールド(遮蔽)する当社独自の技術を表します。

シースルー技術を活用したMRI検査室とCT検査室

EMPROOFには、以下3つの意味が込められています。

電磁波を防ぐ

例えば、防水は英語でウォータープルーフ(waterproof)、防弾はブレットプルーフ(bulletproof)。プルーフ(proof)は防ぐという意味を持ちます。エンプルーフ(EMPROOF)は新しい言葉(造語)です。EMは、電磁波(ElectroMagnetic wave)を表しているので、EMPROOFは「電磁波を防ぐ」という意味になります。

EMPOWER

EMPOWER(エンパワー)とは、力を与えることです。私たちは電磁波の恩恵を活かしながら、日々のライフスタイルを進化させています。その進化に、活力というパワーを与えたい。そのために、EMPROOFは高度な技術で貢献します。

電磁波と安心して暮らす世界を創る

上述の「電磁波を防ぐ」「EMPOWER」の双方が揃うことで、「皆様を守りながら活力を与え、世界中の人々や社会が、より健康的でより進化した生活を送れる」ように、探求を続けるという決意を表しています。

EMPROOFの素材は何が特殊なの?

極細の特殊な糸の断面構造
極細の特殊な糸の断面構造

当社独自の技術で電磁波をシールド(遮蔽)するEMPROOF®(エンプルーフ)の特殊素材。その特殊性はどこにあるのでしょうか?

例えば、電波をシールドする素材を形成している「極細の特殊な糸」が挙げられます。図は、その断面構造です。

ポリエステルを芯材とし、その周囲に銅とニッケルがコーティングされており、その細さは「髪の毛の3分の1」ほどです。銅やニッケルのコーティングの厚みは1µm程度(1ミリの1000分の1)で、非常に高度な技術が必要です。このような構造により、「繊維の柔軟性」と「金属の導電性(電波シールドに必要)」を兼ね備えた実用性を実現しています。

EMPROOF®(エンプルーフ)の電波シールドメッシュ素材
EMPROOF®(エンプルーフ)の電波シールドメッシュ素材

この特殊な糸を使うことにより、例えば下記のようなEMPROOF®(エンプルーフ)の電波シールドメッシュが製造されています。

この電波シールドメッシュ素材には、「特殊な織り加工」が施されています。下の写真は、上の電波シールドメッシュ素材の拡大写真です。糸の「太さ/細さ」と「隣同士の間隔」は、電波シールド性能に直結します。例えば、太い糸を小さな間隔で織っていくと、電波シールド性能は上がります。その代わり、シースルー性(透明性)は下がります。逆に細い糸を大きな間隔で織っていくと、シースルー性は上がりますが、電波シールド性能は下がります。従って、このトレードオフを鑑みながら、糸素材やメッシュ素材を設計/製造することが必要です。

EMPROOF®(エンプルーフ)の電波シールドメッシュの拡大写真
EMPROOF®(エンプルーフ)の電波シールドメッシュの拡大写真

もう一つ重要なのは、縦糸と横糸が同じ間隔で、精密に規則正しく整列して織られていることです。「髪の毛の3分の1」ほどの極細で切れやすい特殊な糸を、上の写真のように精密に織っていき、最終的には幅が約1m、長さが約300mのロール状メッシュ素材に仕上げます。

このような高い精密性は、なぜ必要なのでしょうか?

例えば、MRIやCTなど医療用及び研究用の画像診断装置の検査室専用として開発されたSee Through(シースルー)という技術を見てみましょう。MRIの電磁波シールドルームでは、電波を100億分の1以下に減衰させる必要があります。そのため、See Throughの電磁波シールドルームを施工する際、シースルー(透明)にしたい箇所ではEMPROOF®(エンプルーフ)の電波シールドメッシュを二重に使用します。メッシュを二重に使用する場合、「織りの精密性」が低いと、モアレ模様(干渉縞)が発生してしまい、高いシースルー性(透明性)が実現できないのです。

この辺りの研究開発プロセスにおける秘話については、「See Throughはどのようにして生まれたの?」をご覧ください。

EMPROOF SEALやKAYAで使われている電波シールド特殊素材の拡大イメージ
EMPROOF SEALやKAYAで使われている電波シールド特殊素材の拡大イメージ

もう一つだけ、特殊な「織り加工の技術」を紹介しましょう。図は、スマホ向け5G電磁波シールドEMPROOF SEAL(エンプルーフシール)や、乳幼児など向け5G電磁波シールドKAYAの一部で使われている電波シールド特殊素材の拡大イメージです。
極細の特殊な糸 複数本を1セットにして、
縦横に織ってあります。このような織り方により、高い電磁波シールド性能を確保しているだけでなく、軽くて丈夫、かつ質感の豊かな特殊素材として仕上がります。

このように、長年に亘る研究開発を積み重ねた結果生まれたEMPROOF®の特殊素材が、各部位ごとに特殊な構造などで使用されることで、トータルとして電磁波シールド性能やシースルー性(透明性)などにおいて、高い性能や価値を実現しているのです。

EMPROOF特殊素材の
シールド性能は?

EMPROOF SEAL(エンプルーフシール)の電波シールド性能

EMPROOF®素材の測定状況例丸い穴が開いているところへ素材をセットして測定
EMPROOF®素材の測定状況例
丸い穴が開いているところへ素材をセットして測定

5Gとは何?:5Gが生み出す新しい社会」でもお示ししたように、5Gの電磁波は日本の場合、3.7GHz帯,4.5GHz帯,28GHz帯の電波が使われています。最初に、EMPROOF® (エンプルーフ)素材の電波シールド性能を見てみましょう。例えば、下の写真のような測定システムを使用して測定します。

周波数が広範囲なため、実際には、複数の異なる測定システムで測定する必要があります。それらを総合した、測定結果の一例を見てみましょう。

EMPROOF素材 電波シールド性能測定結果の一例

下図は横にスクロールするとご覧いただけます。

3.7GHz帯 4.5GHz帯 28GHz帯
108,564分の1 137,032分の1 166,580分の1

全ての帯域で、電磁波が10万分の1未満に減衰していることがわかります。この値は素材そのものの電波シールド性能です。実際にスマホカバーへEMPROOF SEAL(エンプルーフシール)を貼った際の電波シールド性能は異なります。なぜならば、シールを貼る場所や面積がシールド性能に大きな影響を与えるからです。シールをスマホカバーに貼る場所は、最低でもアンテナ付近に貼ってください。詳しくは、EMPROOF SEAL(エンプルーフシール)に説明があります。さらに、スマホカバー全域(前面・後面・背表紙面の全域)に貼ることで、より大きなシールド効果を発揮することができます。詳しくは弊社の保有特許(特許6443960号)に記載してあります。

以下では、当社独自の技術であるEMPROOF®(エンプルーフ)から生まれたSee Through(シースルー)についても見てみましょう。See Throughは、MRIやCTなど医療用及び研究用の画像診断装置の検査室専用に開発された技術です。

See Through検査室の電波シールド性能

健康被害リスクへの備えとして何をすべき?」や「See Throughはどのようにして生まれたの?」でも述べたように、MRI検査室の電波シールド性能は、100億分の1以下という高い性能が求められます。

その測定方法は、アメリカ軍の規格(United States Military Standard)であるMIL-STD-285が一般的によく使われます。部屋の内側と外側に一定距離を置いて、送信アンテナと受信アンテナを設置し、対象となる周波数の電波を発信して、電波シールド性能を測定します。

電波シールド性能の仕様は、MRI装置のメーカーによって示され、対象周波数とシールド性能の数値が与えられます。医療分野は厳正であり、この仕様を100%クリアすることが求められます。

弊社のSee Through検査室は、See Throughの高度な技術で設計・施工されています。耐久性が高く経年劣化にも強い構造をしているため、初期性能としては概ね1,000億分の1近い減衰性能があり、医療関係者からは「画質が良い」とお褒めの言葉をいただくこともあります。

See Through検査室の磁気シールド性能

電磁波の測定システム例
電磁波の測定システム例

電磁波が漏れる危険への基本的対処法」でも述べたように、磁気ノイズのシールド対策工事には、測定・数値解析(シミュレーション)・設計・施工などの異なったフェーズがあり、世界的にも専門家の少ない分野です。

当社のSee Through技術は、多大なる研究を経て開発されています。例えば、設計時に使用するシミュレーションの精度も高く、誤差は平均5~8%に止まっています。材料の製造工程で発生するバラつきも考慮に入れると、精度の高さが理解できると思います。

論文:T. Saito and T. Shinnoh,”Application using Open-Type Magnetic Shielding Method,” J. Magn. Soc. Jpn., vol. 34, pp. 422-427, 2010より
論文:T. Saito and T. Shinnoh,”Application using Open-Type Magnetic Shielding Method,” J. Magn. Soc. Jpn., vol. 34, pp. 422-427, 2010より

図は、交流50Hzの磁場を磁気シールドした際のシミュレーション(数値解析)結果と実測結果の比較です。実線で示しているのが実測値、丸で示しているのがシミュレーション値です。赤・緑・青の色は、空間におけるX・Y・Z軸方向それぞれ磁束密度のベクトルの成分を表しています。一見して、とてもよく一致していることがわかると思います。

このような高精度なシミュレーション技術を駆使し、See Through検査室からの漏洩磁場対策など、各仕様に合わせた磁気シールド設計をしっかりと実施することで、確実な磁気シールド性能が実現されます。仕様に関しは、様々な検査室内外のレイアウト条件や環境条件などに対応可能ですので、特殊条件などをお考えの方も安心してご相談ください。軟磁性材料を活用した磁気シールドの他にも、コイルを使用した磁気ノイズキャンセリングも実施しております。

See Through(シースルー)は、上述したように、MRIやCTなど医療用及び研究用の画像診断装置の検査室専用に開発された技術という位置づけですが、医療分野以外にも半導体工場の製造装置向けの磁気シールド工事や、電子顕微鏡向けの磁気ノイズキャンセリング工事なども実施しております。下のボタンをクリックして、お気軽にお問い合わせください。

弊社技術代表が発明した開放型磁気シールド技術のシールド性能は、条件や設計によっては、従来の密閉型磁気シールドに比べ同等もしくは高いことも特徴の一つです。下の表を見ると、ある実験条件では、直流に近い磁場(0.05Hz)で最大8.1倍、交流磁場(50Hz)で最大2.6倍、シールド性能が良いことが理解できます。

開放型磁気シールドと密閉型磁気シールド(従来型)の性能比較

下図は横にスクロールするとご覧いただけます。

No. Applied Magnetic Field Shielding Factor S Ratio of S
DC/AC Magnetic Flux
Density [µTp-p]
Open-type
method
Conventional
method
1 DC
(0.05Hz)
1 63.7 13.0 4.9
2 10 80.4 14.3 5.6
3 100 141.7 17.4 8.1
4 AC
(50Hz)
1 21.2 9.8 2.2
5 10 21.3 10.0 2.1
6 100 27.4 10.6 2.6

上の表の各数値は、下の写真に示すように、開放型磁気シールドと、従来の密閉型シールドを900mm角の立方体状に組み上げ、Kakuno-Merritt Coilという均一磁場を発生するコイルを使用し、上の表にあるように周波数と磁束密度を変えた6種類の磁場を印加し、立方体の中央でどの程度磁場が遮蔽されているかを実験した結果です。

開放型磁気シールドと密閉型磁気シールド(従来型)の性能比較 実験状況

開放型磁気シールドと密閉型磁気シールド(従来型)の性能比較 実験状況

論文:T. Saito, “Shielding Performance of Open-Type Magnetic Shielding Box Structure,” IEEE Trans. Magn., vol. 34, (no.10), 4640-4643, 2009より

このように、長年に亘る様々な研究開発により、EMPROOFやSee Throughの技術は発展してきました。

私たちが目指すのは、電磁波の恩恵を活かしながら、同時に悪影響を低減し、日々のライフスタイルを進化させること。電磁波への意識・認識が拡がる中、皆様を守りながら生活に活力を与え、世界中の人々や社会がより健康的でより進化した生活を送れるように、探求を続けています。